インボイス制度をきっかけに「IT導入補助金」のことを知ったという方もいらっしゃると思います。IT導入補助金は、ITツールを使って生産性を高めたり、セキュリティ対策を行う場合に活用できる補助金です。その他に、ECサイトの構築や社内システムの構築なども対象となります。
中小企業のDX化を推進したい国としても、ITの活用やDX化は今後のトレンドとして続いていくものと思われます。そのなかで、今回は経理業務の効率化とIT導入補助金について書いています。
- IT導入補助金を活用したことがない方
- インボイスを機に経理周りを変更しようと考えている方
- 今までクラウド会計ソフトを使ったことがない方
IT導入補助金の概要
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールの導入を支援する補助金制度です。この補助金が他の補助金と違う点は、導入事業者とITベンダー等が共同で作業を進めていくところになります。
その他の補助金共通の考え方は以下の通りです。
補助金の基礎知識
補助金の目的
補助金は、国や地方自治体の政策目的に合わせて募集されています。例えば、今回のIT導入補助金2023は、インボイス制度導入に伴う投資負担を軽減する役割も担っています。
補助金は、企業側からすれば、一種の資金調達手段の役割があります。また、仮に新たな投資が失敗した場合でもリスクを軽減してくれます。
申請したら必ずもらえる訳ではない
補助金には事前の審査があります。そのため「申請したら必ずもらえる」というものではありません。また、審査を受け補助金交付が決定した後も、定期的に実績報告書などの提出が必要です。
全額が補助される訳ではない
投資した経費全てに対して補助金がもらえる訳ではありません。一般的には2分の1から3分の2の補助率が多いようです。そのため、事前に補助対象となる補助経費や補助金の割合を確認しましょう。そして、補助金申請を行う投資の事業計画も一緒に作成することをおすすめします。
なお、一般的な補助金の基礎知識については、過去のブログをご参考ください。
2023年IT導入補助金のスケジュール
(2次締切分)
締切日・・・・・2023年5月16日
交付決定日・・・2023年6月21日
事業実施期間・・交付決定~2023年11月30日
(3次締切分)
締切日・・・・2023年6月2日
交付決定日・・2023年7月11日
事業実施期間・交付決定~2023年11月30日
※現時点で確定しているスケジュールです。以後のスケジュールは随時公表される予定です。
導入・手続きの概要
IT導入補助金を申請する場合の手続きになります。
申請にあたっては「中小企業・小規模事業者等のみなさま」と「ITベンダー・サービス事業者のみなさま」の2者間でやり取りを行っていきます。そして、2者間で作成した申請書を「IT導入補助金事務局」に提出します。
私も以前にIT導入補助金を申請したことがありますが、その経験から言うと他の補助金(事業再構築やものづくり補助金)より申請内容は簡素になっています。
申請のポイントは、交付申請内容の「労働生産性指標」や「導入ITツール情報」などの要件を理解して事業計画書を作成することだと思います(具体的な要件は公募要領に記載してあります)。
ちなみに、公募要領に記載してある加算項目・減点項目は以下の様になっています。
審査項目 | 審査事項 |
事業面からの審査項目 | ・自社がインボイスにも対応するための、生産性向上にもつながる効果的なITツールを導入しているか ・自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているか |
政策面からの審査事項 | ・生産性の向上及び働き方改革を視野に入れ、国の推進する関連事業に取り組んでいるか ・国の推進するセキュリティサービスを選定しているか ・賃上げに取り組んでいるか(加算項目について) |
IT導入補助金の申請前に準備しておくこと
GビズIDの取得
GビズIDは、法人や個人事業主向けの共通認証サービスです。補助金だけに限らず、他の行政サービスを受ける場合にも利用できます。
gBizIDプライムは、アカウント取得まで1~2週間程度かかります(書類に問題がない場合)。有効期限や年度更新の必要はないため(2023年4月現在)、取得されていない方は、早めの取得をおすすめします。
(参考:GビスID https://gbiz-id.go.jp/top/ )
セキュリティアクション「自己宣言ID」の取得
独立行政法人情報処理推進機構が実施する「SECURITY ACTION」の宣言が必要になります。
(参考:セキュリティ対策自己宣言 https://www.ipa.go.jp/security/security-action/it-hojo.html )
みらデジの取得
2023年のIT導入補助金申請より新たに追加となりました。会社のデジタル化活用状況をチェックしたり、課題を把握することができます。
(参考:みらデジポータルサイト https://www.miradigi.go.jp/ )
公的書類の取得
法人の場合は2つ、個人事業主の方は3つの書類が必要になります。
<法人の場合>
必要書類 | 内容 |
履歴事項全部証明書 | ・3カ月以内に発行されたもの |
納税証明書 (その1またはその2) | ・税務署で発行された直近のもの ・税目「法人税」のもの |
<個人事業主の場合>
必要書類 | 内容 |
本人確認書類 | ・運転免許証(有効期限内) ・運転経歴証明書 ・住民票(3カ月以内に発行されたもの) |
納税証明書 (その1またはその2) | ・税務署で発行された直近のもの ・税目「所得税」のもの |
確定申告書の控え | ・税務署で受領した直近分(令和4年分) ・税務署の受領印もしくは受信通知があるもの |
経理まわりのIT導入補助金の活用例
補助金の申請をする前に
IT導入補助金の特徴は、中小企業者等の導入事業者とITベンダー等(会計ソフトメーカー)が共同で作業を行い補助金申請を行う点です。
そのため、機器導入にあたって自社の意見が定まっていない場合には、ITベンダーの提案に流されてしまう可能性があります(オーバースペックな設備投資になったりと)。
そうならないためにも、まずは自社の「現在の問題点」、「ここがもっと楽にならないか」や「このようにしたい」などの自社の考えをはっきりさせることがスタートラインになります。
経理業務では
インボイス制度が今年の10月から開始されることはご承知のとおりかと思います。
IT導入補助金2023のデジタル基盤枠では、PC・タブレット等のハードウェアの購入費用も補助対象となっています。今までPCなど使っていなかった小規模事業者がインボイス制度に対応するためには、ハードウェアも必要になってくるとの考え方からだと思います。
IT導入補助金の活用は経理業務をアナログで行ってきた事業者にとっては、業務効率化を考えるきっかけになるのではないでしょうか。
会計ソフトメーカーの対応は
各会計ソフトメーカーもIT導入支援事業者に登録しています。当事務所では、これまでもクラウド会計の導入を支援してきました。その中で、おすすめのクラウド会計についてご紹介させていただきます。
弥生会計で検討すると
対象となる弥生製品は・・
- クラウド会計ソフト「弥生会計オンライン」
- デスクトップ会計ソフト「弥生会計23」
- クラウド請求書ソフト「MISOCA」
- デスクトップ販売管理ソフト「弥生販売23」etc・・・
デジタル基盤枠では最大4分の3の補助率となります。
弥生会計のホームページ https://www.yayoi-kk.co.jp/products/ithojo/
マネーフォワードクラウドで検討すると
対象となるマネーフォワードクラウドサービスは・・・
- マネーフォワードクラウド会計
- マネーフォワードクラウド請求書
- マネーフォワードクラウド債務支払
- マネーフォワードクラウドインボイス
- マネーフォワードクラウド経費 etc・・・
マネーフォワードクラウドのホームページ https://biz.moneyforward.com/
まとめ
IT導入補助金の概要と関連した会計ソフトについてご紹介しました。
政府もインボイス導入に向けて設備投資が必要な事業者に対して政策的にフォローをする方向です。補助金なので、申請すれば必ずもらえるというわけではありませんが、採択されれば資金調達手段の一部になります。
その際は、補助金ありきのシステム更新ではなく、この「システム更新が必要」から「IT導入補助金」の流れでご検討されてはいかがでしょうか。