管理会計という言葉を聞かれたことはありますか。
管理会計は、会計情報を経営の意思決定に役立てることを目的とした内部用の会計です。
一方、管理会計と比べられるのが財務会計です。
財務会計は、株主や債権者などの外部利害関係者に財務状況を報告するために作成されるものです。
普段、現金預金や支払情報を会計ソフトに入力して決算書を作成するのは財務会計になります。
管理会計というと小難しく聞こえますが、ざっくりいうと「経営判断に数字を活用しよう」ということです。
スモールビジネスでも活用できる、いまの環境にひと工夫することで始められる管理会計について書きます。
スモールビジネスの管理会計
みなさんは普段会計をどのように活用されていますか。
- 税金の申告のため
- 銀行に提出するため
- 経営に活かすため ・・・等々
目的は色々あると思いますが、スモールビジネスでは帳簿をつけるだけで精一杯のところも多いと思います。
税金の申告用であれば、極端に言えば売上と費用、差額の利益がわかれば十分です。
申告用だけに会計帳簿をつけているのであれば、これから管理会計を導入するメリットは大いにあります。
「月次の試算表の作成」、「棚卸のカウント」、「顧客管理」や「計数管理」など、毎月の業務に加えるだけで、経営数字の見える化ができます。
といっても、スモールビジネスでは、人材も時間も制限されることが多いかと思います。
そこで、現状の資源を活かしながら管理会計を取り入れていくことをおすすめします。
最初から完璧を求めず、できることから一つずつ始めてみてはいかがでしょうか。
まず最初は「売上」科目の管理会計
最初は、経営者の方が一番気になる科目の一つ、「売上」を分析します。
普段、会計ソフトには「売上」をどのように入力していますか?
例えば売上の入力方法を変えるだけで、様々な情報を得ることができます。
スモールビジネスの管理会計では、
まずは「会計ソフトのデータ」をベースに活用すると始めやすいです。
会計ソフトの使い方を工夫して分析する
会計ソフトを活用して、管理会計を行います。
今使っている会計ソフトをそのまま利用するので、以下のようなメリットがあります。
- 追加コストがかからない。
- 会計ソフトの画面を開けばすぐに必要な情報がみれる。
- 前期比較なども簡単にわかる
例えば、飲食店を例に考えてみます。1カ月の売上が100万円だったとします。
これだけだと、売上総額の情報しかわかりません。
それでは、次のように売上の内容を細かく分けてみてはどうでしょうか。
(※分け方は、会社が知りたい情報に基づきます)
細分化することによって、意外に「持ち帰りの売上が多かった」など、売上の中身が見えてきます。
さらに、原価情報をひもづけすると、それぞれの売上内容ごとの儲けも把握しやすくなります。
会計ソフトで売上分析を行う場合のポイントは次のとおりです。
- どういうデータが欲しいか、最初に決めておくことがスタート
- 店内売上、持ち帰り売上、などのように科目(補助科目)を増やす
- 内容を入力するとき、〇〇商店などの相手先を入れる。(定型の登録をすると楽です)
- 支店ごと、店舗ごとなどの大きな括りでみるときは部門別会計を検討
- 細かく設定すると、その分手間も増えます。費用対効果を考えながらの設定を
通常業務のインプットの段階から、アウトプットのイメージをもって業務を行うと数字の活用度が高まります。
飲食店等はAirレジなどのクラウドレジを活用
既にクラウドレジを使っている方もいらっしゃると思います。ipadなどのタブレットでレジ精算する方法です。
ここでは、Airレジを参考に紹介します。
Airレジにあらかじめ売上メニューを登録しておくと、精算情報が自動的に集計されます。
飲食店、美容室、アパレルなどの小売店では特に導入メリットは高いと思います。
ちなみに、Airレジなどのクラウドレジはクラウド会計と連携しているものがあります。
レジ売上をいちいち手入力せずに、データを飛ばして売上帳簿を作成することも可能です。
Excelデータに落とし込んでピボット分析
こちらは、ひと手間掛けた分析方法になります。
売上帳簿のデータをExcelなどにダウンロードして集計します。
集計方法は、色々ありますがピボットテーブルが便利です。
内容欄(摘要欄)から集計したり、金額から集計したりできます。
こちらのポイントも、「あらかじめ欲しいデータを決めておくこと」です。
<例>飲食店経営。節分の恵方巻だけの売上金額を集計したい場合。
→内容欄に「恵方巻」と入力しておく。内容欄集計を行い恵方巻売上高を計算。
売上分析の応用例
上記では、会計ソフトのデータを活用して、売上分析を行いました。
次は、もう少しデータを活用してみます。
売上高差異分析
お客様に着目すると売上高は次のように分解されます。
売上高=顧客数×単価
そのため、売上増減の要因が①顧客数の増減なのか②単価の増減なのかで対策も変わってきます。
部門ごと、商品ごとなどにカテゴライズするとさらに詳細になります。
顧客リストの作成
顧客リストは宝の山とも言われます。
すべての商売は、リピート客がいて成り立っています。
売り切りと思っている商売でも、実はアフターフォローの需要があったりします。
誰がお客様なのか、誰が将来のお客様になるのか。クレーム対応はどうしたのか。
自社の顧客リストが商売のタネとなっていきます。
コストを掛けれるのであれば専用の顧客管理ソフトがおすすめです。
最初はコストを掛けたくない、などの場合は「会計ソフトデータとExcel」を利用して顧客リストを作成することもできます。
ABC分析
ABC分析とは、パレートの法則に基づいた分析フレームワークです。
「売上高上位2割の顧客で売上金額の8割を占める」という話を聞いたことはないでしょうか。
ABC分析によって商品や顧客などを把握することは、どこに重点を置いて経営を行っていくかの参考となります。
また、集計方法も売上・粗利益・リピート数など、自社の目的に応じて設定すると効果的です。
ここに挙げた内容は一例です。
他にも、「営業の訪問件数と売上増加の関係」、「トラック燃料消費と売上の関係」など会社ごとの指標を設定して売上増加の法則を探すと思わぬ発見があるかもしれません。
まとめ
スモールビジネスの管理会計について説明しました。
今回は売上編です。今ある資源や情報からでも十分経営に役立つ情報を収集できます。
費用対効果を考えながら、できることから始めてみてはいかがでしょうか。
特にいままで管理会計をしていなかった会社にとっては、新しい発見があります。