令和5年10月からのインボイス制度開始から1年が経過しました。
インボイス制度導入により発行番号の確認や請求書の確認など、特にバックオフィス業務では手間が増えました。
税理士の立場からすると、2割特例の適用可否や、消費税関係の届出など特に小規模事業者に対しての負担が増えたように感じます。
さて、現行のインボイス制度に十分に対応できていない所もあるかもしれませんが、政府は次のインボイス制度への移行を考えています。
それが「デジタルインボイス」というものです。
デジタルインボイスとは
デジタルインボイスについては、以下の「紙の請求書の時代」から「デジタルインボイス」の流れで説明します。
紙の請求書の時代
請求書の発行はすべて紙でした。
専用ソフト・Excel・手書き。作成方法は別々でも最終的には紙に印刷して郵送という流れです。
当然ですが、受け取る側も紙で受け取ります。
取引量が膨大な会社は、1月分の請求書の束も結構な厚みとなっていました。
電子インボイスの時代
電子インボイスでは、請求書をパソコンで作成しますが、それを紙に印刷しません。
そのままデータ(PDF、CSV形式など)をメールに添付して送ります。これにより、郵送料金の節約にもなりますし、請求書を封筒に詰める作業もいりません(地味にこの作業は大変です)。
受け手もデータで受領するため、そのままデータ保存します(電子取引の対象で原則データ保存が義務となります)。
ただし、仕訳記帳業務は紙の時代と同じでその請求書データを見ながら手入力が必要です。
デジタルインボイスの時代
デジタルインボイスとは、「請求情報(請求に係る情報)を、売り手のシステムから、買い手のシステムに対し、人を介することなく、直接データ連携し、自動処理される仕組み」です(デジタル庁、「デジタルインボイスについて」より)。
データで作成した請求書をメール添付などで送付するのではなく、そのままデータで送ることになります。
受け取り側もそのままデータで受け取り、仕訳記帳もデータからの自動連携になります。
上記を図にするとこのような感じです。
現在は紙を前提としたアナログとデジタルが混在した時代です。
政府の考えるデジタル化は、請求から支払、仕訳記帳、さらに入金消込といったバックオフィス業務全体のデジタル化を目指しています。
デジタルを活用してバックオフィス全体の効率化が図られ、人為的なミスも減るのであれば良いことだと思います。
会計ソフトでデジタルインボイスを活用する方法
では、実務でデジタルインボイスを活用するとどのようになるのかを見ていきます。
ここでは、マネーフォワードクラウド会計を例にデジタルインボイスの活用方法を説明します。
(注)デジタルインボイスで請求書情報をやり取りするには、売り手と買い手双方がペポルIDを取得する必要があります。
1 ペポルIDの取得と登録
まずはペポルID(※)を取得します。
※事業者に対して1つ割り当てられるものです。デジタルインボイスの送受信時に必要となります。インボイス登録番号をペポルIDとして用いられるのが一般的です。なお、インボイス登録事業者でない方はペポルIDを発行できません。
マネーフォワードの管理コンソール画面へログインします↓↓
マネーフォワード>管理コンソールへログイン > Peppol IDの取得 > Peppol IDの番号確認
一般的な企業が利用できるペポルIDは、法人番号またはインボイス登録番号等です。
複数のペポルIDの取得や追加したペポルIDを変更、削除することはできませんのでご注意ください。
2 デジタルインボイスで請求書を送付する
売り手と買い手の双方でペポルIDの取得が完了したら、デジタルインボイスの請求書を送受信することができます。
BtoBやBtoCなど事業内容に応じて、(発行)請求書のみから始める。または(受取)請求書から始める、などそれぞれの企業状況に応じて対応されていいかと思います。
マネーフォワードの請求書ソフトで作成すると以下のイメージになります。
請求書の作成までは、いままでと同じです。
その後の請求書送付方法として「デジタルインボイス」を選択し、送信ボタンを押します。
これで受信側の企業に請求書が送られます。
3 デジタルインボイスで請求書を受領する
マネーフォワードの場合は、売り手から送信されたデジタルインボイスの請求書は「クラウドBOX」上に自動で保管されます(各会計ソフトベンダーも名称は異なりますが、クラウド上で保管するサービスがあります)。
請求書の内容を確認するときは、「クラウドBOX」にログインします。
マネーフォワード>クラウドBOXへログイン > ファイルの検索・閲覧
4 受領請求書から仕訳計上する
3の受領請求書の続きです。
受領した請求書から「仕訳データ」を作成します。
マネーフォワード会計>自動で仕訳 > デジタルインボイスから入力 > 仕訳候補
自動で仕訳候補が作成されます。内容に問題がなければ「登録」をします。
仕訳候補の内容を「自動仕訳ルール」として保存すれば、仕訳候補の精度も高まります。
このあたりは通帳口座の自動連携と同じで、導入初期の定期的なメンテナンスが必要です。
まとめ
デジタルインボイスについて説明しました。
紙の請求書の時代(まだまだ紙の利用が多いと思いますが)は、印刷・発送作業と手間がかかっていました。
デジタルインボイスになると、随分と作業工程が変わると思います。
以前聴講したデジタルインボイスのセミナーでは「発想を変えてください」というキーワードがありました。
「今までこうだった」を一旦置いといて、「まずはやってみる」とその良さがわかるかもしれません。
余談ですが、私は調べものをするときはやっぱり紙の書籍がしっくりきます。文庫本も紙媒体が好きです。
アナログの良さもあり、デジタルになることのメリットもあると思います。デジタルを活用できるところは検討してみてはいかがでしょうか。