月次決算を大切にしている理由。毎月の数字の正確さにも注意して欲しい。

夏の終わりも近づいています・・・

瀧川税理士事務所では、月次決算経営計画を支援業務の基本としています。決算業務と聞くと、一年に一度行う「年度決算」を連想する方が多いかもしれません。月次決算は、その名のとおり毎月決算業務を行うことです。

中小企業でも、すでに月次決算を行っているところは少なくないかと思いますが、どうして月次決算が重要なのか、そして、月次決算を作成するポイントについて深掘りしていきます。

目次

月次決算の目的は?

年次決算は法律で実施することが義務付けられていますが、月次決算を行うかはその会社の任意です。月次決算を行う一番の目的は、自社の経営状況を早期に把握し、経営方針を再考することです。

「うちの会社が今いくら儲かっているのか、又は損をしているのか」、経営者はその状況をいち早く知りたいものです。月次決算を行うメリットをあげると・・・

問題の早期発見につながり、早めの対策がうてる

数字(営業活動)の良かった点、悪かった点を早期に振り返ることができます。「鉄は熱いうちに打て」ではないですが、問題がある場合にはそれを認識する時(タイミング)が大事です。

例えば、飲食店が値段の変更をした場合、お客様の反応を知りたいものです。経営者が行った施策に対しての検証や、市場環境が変化したことによる自社の影響など、毎月の決算書には様々な情報が含まれています。また、会社独自のKPI指標を予め設定しておくこともおすすめです。利益率や自己資本比率などの基本指標から、旅館業であれば空室稼働率、運送業であれば燃料費など、それぞれの会社で必要な指標があると、問題発見の気づきになります。

以下は、「日本政策金融公庫」が公表している中小企業の経営指標データを参考までにリンクしてあります。

https://www.jfc.go.jp/n/findings/shihyou_kekka_m_index.html

進捗管理にも役立つ

月次決算は、マラソンで例えると区間タイムを計るようなものです。42.195Kmというゴールがあり〇〇時間で完走するという目標があれば、区間タイムを計測することにより、現在の進捗状況を客観的に把握することができます。そして、次の区間は〇〇分で走ろうという目標が生まれます。PDCAサイクルをまわしながら、進捗管理にも役立ちます。

金融機関からの融資を受けやすくなる

金融機関が融資を検討する場合、その会社に返済能力があるのかの調査をします。そのため、定量情報として直近の試算表を求められます。直近の業績がわからない場合は、融資スピードが遅くなり融資交渉が不利になります。

年次決算の基礎となり、決算業務の負担を軽減できる

正確な月次決算を積み重ねることで、四半期決算や年次決算の基礎作りができます。月次決算を12回繰り返えしたものが年次決算になります。つまり、決算業務を平準化することができ、年次決算時に余裕が持てるようになります。

それと、決算着地見込みの精度も高まるため、利益が大きい場合には節税対策を実施するなどの決算対策がとれます。納税予測もできるため、納税資金の準備や資金繰りの予定も立てやすくなります。

税理士からみる月次決算のチェックポイント

月次決算で重要なことは、「正確性」と「スピード」です。正確性が担保されていない決算書は誤った判断を与えてしまいます。また、翌月に完了しない月次決算では、経営判断には役不足です(理想は、翌月10日までの月次決算報告)。

ただし、正確性とスピードを両立させながら毎月決算業務を行うのは大変です。そのため、月次決算ではきちんと押さえるべき所と、少し手を抜いていい所とでメリハリをつけても問題ありません。

ここでは最低限ここは気をつけて欲しいポイントについて述べています。

現金をきちんと合わせているか

現金管理をきちんとしているかは極めて重要です。仕事とプライベートの現金を区別していること、帳簿と実際の手元現金が一致していることは、経理の基本ですが、これが出来ていない会社が意外に多いです。

現金を合わせることにより、売上や経費の計上モレに気づくことができます。また、経理を他人に任せている場合には横領を牽制する効果もあります。

現金を合わせるポイントは、帳簿を正確につけることはもちろんですが、現金を数えることから始めるといいと思います。現金の取扱量にもよりますが、毎日の日課として現金を数えて金種表に記録します。

発生主義で経理しているか

発生主義とは、現金の入金や支払時でなく、商売が成立したとき(請求書を発行したり、受け取ったとき)に売上や経費を計上する考え方です。一方で、現金の入金や支払時に計上する方法は、現金主義といいます。

発生主義の目的は、売上と経費を同じ月に計上し対応させることにより、利益を正確に把握することにあります。発生主義で経理することにより、前年比較や予算との比較も正しくできるようになります。

在庫管理(棚卸資産の計上)をしているか

在庫管理はとても手間がかかりますが、会計や経営管理でもとても重要なことです。そのため月次決算においても月末在庫をカウントし、帳簿に計上することが望ましいです。しかし、毎月は正確な在庫をカウントする時間がない、商品点数が多いなど、在庫カウントが難しい場合には、大まかな在庫数字でもいいので計上することをおすすめします。在庫を帳簿に計上することにより、正確な利益を計算することができます(大まかな在庫数字であれば、決算の精度は落ちますが、計上しないよりはマシです。その後徐々に改善していきます)。

一方、経営管理上も在庫をカウントする意味があります。例えば、飲食店では「先入れ先出し」が徹底されていなかったり、賞味期限切れの不良在庫が見つかったりするかもしれません。買ったはいいけれど、一度も使わず埃かぶった商品が見つかることもあります。在庫管理を行うことで、適正在庫の把握にもつながり無駄な仕入れが減少します。

減価償却費や賞与引当金の計上をしているか

減価償却費や賞与引当金の概算額を毎月計上します。決算時や賞与支給時に減価償却費や賞与を計上すると、その月だけ利益が大幅に変わってしまいます。毎月概算額を計上することにより、賞与の支給時期などに影響されることなく、毎月の本業の営業成績を正しく把握することができます。

債権・債務の管理をしているか

掛け取引をしている得意先、仕入先の管理をします。そこまで相手先が多くなければ、会計ソフトを使った管理で十分です。発生主義の会計と関係しますが、取引が完了した都度、会計ソフトに入力していけば、一覧の管理台帳を作成できます。取引先が多い場合には、Excelや債権債務の管理ソフトを利用します。管理ソフトを使う場合には、銀行振込APIとの連携もできるので、手間の削減と内部統制にも効果的です。

(補足)ITやクラウド会計を活用して、効率化を目指す

会計や経理は専門用語があり、簿記の知識も必要で難しいとのイメージがあるかもしれません。ですが、私が会計業界に就職した10年ほど前からすると今はITや電子化が大きく進歩しています。

過去から現在へ、経理の仕事のやり方が変わったなと思うことを羅列すると・・・

  • 伝票や元帳は手書きで作成 → PCソフトやエクセルで行う
  • 通帳は銀行で記帳してから入力 → ネットバンキングと連携し、自動仕訳
  • 申告書は複写シートを敷いて書いてた → 申告ソフト活用、使い勝手も格段に向上
  • 資料は郵送やファックス → メールやDropBoxなどのクラウドを使った方法
  • 銀行窓口での納税 → インターネットバンキングで完了。銀行待ち時間なし

などなど、仕事が楽になったものはたくさんあると思います。経理についても、5年前、10年前からやり方が変わっていなければ、改善できるところ、楽にできることはたくさんあります

当事務所はマネーフォワードクラウドや弥生会計をメインに使っていますが、システムのおかげで作業負担が軽減できたことはたくさんあります。ITツールについては常にアップデートしていくことが大切だと思います。

まとめ

月次決算の目的や実施するメリット、そして月次決算のチェックポイントについてまとめました。税理士が経営者の方とお話する場合、数字が共通言語となります。

当月の売上や利益、経営指標に至るまで会計数字を用います。そしてその基礎となるのが月次の決算書や年次決算書です。正しい数字で説明し、経営者の方へ適切な判断材料を提供することが重要だと考えます。

一方で、月次決算には「スピード」も必要です。正確性を担保にしながら手抜きができるところは、手抜きをして月次決算を終わらせることも大事です。

今はITやクラウド会計もだいぶ進歩しています。様々なツールを使いながら、正確性とスピードの両立を目指し、経営判断に役立つ月次決算が完了できればと思います。

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