私は街の税理士として、上場企業のような大企業ではなく、中小企業のオーナー経営者とお仕事をすることがほとんどです。
今回は日頃から中小企業の経営者の方々と接する中で、投資(ここでの投資は、設備に対するものから人に対するものまで)について思うことをまとめました。
中小企業は一般的に資金面で余裕があるとは言えず、投資に回せる資金も限られていると思います。しかしながら、まったく新規投資を行わなければ、将来の売上や利益の獲得機会を逃してしまいます。
また、投資に失敗すると一気に資金繰りが厳しくなることもあります。そのため、限られた資金の中で投資の優先順位を決め、「どれだけのリスクを取って、どれだけのリターンを狙うのか」という判断がシビアに求められます。
また、投資といっても内容は様々です。
- 新規事業への投資なのか
- 既存事業やその延長線上への投資なのか
- 設備に対するものか、人材に対するものか
投資の内容によってリスクの性質は大きく異なります。例えば、投資対象となる資産が再販売可能なものか、あるいはその事業以外に用途がなく失敗すれば価値がほぼゼロになるものなど。その内容によってリスク許容度は変わってきます。
人材に対しても、新規雇用を行う企業規模が100人の会社と5人の会社では増員に対する考え方がまったく違います。
結局のところ重要なのは、その事業の将来性を見極め、可能な限りマーケティングを行い、その計画の精度をあげていくことです。あわせて資金計画を含めた事業計画を検討した上で、投資にゴーサインを出すかどうかだと思います。投資の成功を100%保証できる人は誰もいません。最終的には経営者の判断に委ねられます。
私の感覚では、大企業より中小企業の方が楽観的な計画が多いように感じます。稲盛和夫氏が「計画は悲観的に、実行は楽観的に」と述べていますが、投資を検討する際には、うまくいった場合とそうでない場合の両面を考えるべきでしょう。そして万一失敗した場合には、資金繰りを含めてどのようにリカバリーできるのかも想定しておく必要があります。
新規投資案件から投資判断までの時間が限られているケースもありますが、それでも可能な限りの事業計画を作成することは不可欠です。
さらに、投資は実行して終わりではありません。特に失敗したときには、なぜうまくいかなかったのかを検証することが大切です。過去の失敗を振り返ることは辛い作業ですが、これは必要なプロセスです。まさにPDCAサイクルを回すことが重要なのだと思います。