その経費って本当に節税?

いぶすきの玉手箱列車です。

決算期が近づいてくると、その会社の利益推移状況から概算の納税額をお伝えします。

その時に、対応できる節税方法についても打ち合わせを行います。

しかし、納税額を可能な限り抑えることばかりに意識が向くと、本来の会社経営の目的とズレてしまう場合もあります。

そこで今回は「節税とお金の関係」について考えてみたいと思います。

目次

節税とは

「節税」という単語はよく耳にする言葉です。

「法律に従い適切に支払う税金を減らすこと」を節税と言いますが、資金流出を伴う節税から資金流出がない節税までいろいろとあります。

節税に似たもので「課税の繰延べ」というものがあります。税金の支払い時期を先延ばしにするものです。

代表的なものに、生命保険契約(最近は繰延効果は薄くなりましたが)や倒産防止共済などがあります。

支払ったときには経費になりますが、解約等で戻ってくるときは収入になります。

節税にしても、課税の繰延べにしても、一時的には納税額が少なくなりますが長期の視点でみるとその経費支出は本当に良かったの?と疑問符がつくものもあります。

一般的に「良い節税」、「悪い節税」などと言ったりしますが、その節税方法が会社にとって本当に良かったのかを見直しする機会はあった方が良いかと思います。

節税とお金の関係

税金とお金の関係を確認

それでは実際に具体例を用いて税金とお金の関係を確認します。

例)当期の税引前の利益は1,000万円。法人税率は30%で計算。

  ①は追加経費なし。②は追加経費を500万円計上。

①追加経費なし②追加経費あり
税引前利益1,000万円500万円
法人税△300万円△150万円
税引後利益(残るお金700万円350万円

①は法人税を300万円支払いますが、手元に残るお金は700万円です。

②は利益圧縮のために追加経費を500万円計上した結果、法人税は150万円に減少しました。同時に手元に残るお金も350万円に減少しています。

(注)説明用に簡易に作成しており、詳細な税制は省略しております。

法人税の計算は、税引き前の利益に一定の法人税率を掛けて計算します。

そして税引後利益(残るお金)が会社に残るお金であり、借入金の返済もここが原資になります。

余談ですが、「借入金の返済は経費になりませんか?」と質問を受けることがありますが、借入金返済は経費になりません。

お金の流れとしては、税金を支払ったあとの残った金額から返済をすることになります。

大事なのは経費の使い方

ここで大事なのは経費(費用)の使い方です。

もともと来期に購入する予定だったものを前倒しで購入するのであればその経費は活きた経費になります。

しかし、使用頻度は少なそうだけど「税金を支払うよりはモノでも買って納税額を減らそう」などの動機で買い物をすると、たしかに納税額は減りますが手元の資金も減ります。

結果として、その経費は売上に貢献しない無駄な経費になってしまいます。

日本の税制度では税金を支払ったあとの金額が最終的に会社に残ります。

法人税率を30%とすると利益の70%が手元に残る計算になります(減価償却費などの細かい計算は省略)。

間違った節税対策をするよりも、適切な納税を行った方が手元に資金が残る計算になります。

その経費が本当に「活きた経費」なのか今一度考えることが大事だと思います。

本来の目的は会社にお金を残すこと

税金とお金の関係について説明しましたが、稀に「節税」が目的になっている方がいらっしゃいます。

「なるべく税金は支払いたくないから・・・」とのお気持ちはわかりますが、ちょっと方向性が違ったりして。

本来の会社経営の一つの目標は「必要なお金を残す」ことです。税金を圧縮したいがために必要でない経費を支出すれば本末転倒でお金も貯まりません。

そこで、会社経営の目標を貸借対照表の視点から考えてみてはいかがでしょうか。

日本の税制度では、税金を支払った後の金額が会社に残ります。その仕組みを理解し、出来る限りの節税は行いながらも、足腰の強い財務体質にどうやって変えていくかという長期の視点も大事かと思います。

特に中小企業では予算作成や(短期・長期)事業計画を作成している会社はまだまだ少ない印象です。

短期的な節税に目を奪われて、いざという時に「必要なお金が会社にない」という状況では困ります。

まとめ

節税とお金の関係について説明しました。

節税という言葉を聞くと、「税金が少なくなるからいいね!」という反応になりがちです。

しかし、節税はあくまでも手段であって目的ではありません。

節税と思って使った経費が実は無駄な支出ということもあります。すると、会社に残るお金も減少します。

可能な限りの節税は行いつつも、長期の視点で自社の財務体質をどうするかを考えてみてはいかがでしょうか。

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